2025年12月14日に、「日本農福連携学会」の設立総会が開かれ、学会の設立に必要な会則、役員体制などが決められ、無事に、学会を立ち上げることができました。そして、僭越ではありますが、初代の会長に就任することとなりました。学会の大事なスタートダッシュの時期に、その運営を任され、身の引き締まる思いです。
ここ数年、農福連携という取組が持っている力の大きさや魅力に対する理解が広がってきていますが、他方で、国の方でも、地域で暮らす一人ひとりの社会参画を図る観点から、関係省庁による連携強化等を通じ、農福連携を、よりユニバーサルな取組として、障害者のみならず、高齢者、生活困窮者、ひきこもりの状態にある者等の就労・社会参画支援、犯罪をした者等の立ち直り支援等にも対象を広げて推進していく方針が示されました。こうした取組の拡大、対象者の拡大に伴い、当然のことながら、取り組まないといけない課題も増えていくことになります。こうした広がりに対応するためには、農福連携を研究対象としてきた関連各学会が、それぞれの研究分野で研究を行うだけでは、現場に貢献できる研究成果をあげることが難しくなってきていることが研究者間の共通認識として醸成されてきました。
そうしたタイミングで、農学、社会福祉学、医学、心理学等関連する研究領域をまたがる研究者の皆様と、そして、熱い想いで農福連携に取り組む実践者の皆様を会員にお迎えして、共に、農福連携の実践に役立つ研究を行っていくためのプラットフォームとなる学会を立ち上げることができて、本当に良かったと思っております。
今後、会員の皆様と共に、農福連携をより発展させるための情報の共有、それをベースにした研究の実施や成果の発信、現場へのフィードバックと実践等を進めることで、農福連携の一層の発展に貢献できるよう学会の活動を行っていきたいと考えております。私自身も、微力ではありますが、この学会が、そうした農福連携の発展に貢献できるプラットフォームとして大きな力を発揮できるよう全力で取り組んでまいりますので、皆さまも、ご協力のほど、よろしくお願い致します。
日本農福連携学会 会長 吉田行郷
日本農福連携学会は、農業と福祉の連携によって実現される共生社会の理念を、視覚的にわかりやすく示すことを目的として本ロゴを考案しました。 ロゴ中央の若草は、作物や自然環境の成長、生態系の循環を象徴するとともに、農業と福祉を通じて広がる人々のつながりや社会参加の芽生えを表しています。
若草を優しく包み支える両手のモチーフによって、人が人を支え、農業を媒介として福祉が機能する「支援」「包摂」「協働」の関係性を表現し、全体を円環状に構成することで、自然・人・地域社会が相互に結びつき、持続的に循環する農福連携の姿を示しています。
さらに、緑を基調とした配色と視認性の高い字体を用いることで、安心感や調和を伝えるとともに、ユニバーサルデザインの観点から、多様な人々にとって識別しやすいロゴとしています。このロゴは、学会の公共性と学術的信頼性を備えつつ、農福連携が目指す包摂的で持続可能な社会像を直感的に伝える象徴としています。
農福連携(農業と福祉の連携)の取組が全国に広がるなか、2024年度に、今後の農福連携に関する新たな政策の方向性が示されました。まず、同年5月に、改正食料・農業・農村基本法が成立し、新たに同法第 46 条に農福連携が位置づけられ、障害者等が農業活動を行うための環境整備を進め、地域農業の振興を図る旨が盛り込まれました。さらに、これを受けて、同年6月に、「農福連携等推進ビジョン」が改訂され、ビジョンに掲げられた取組を官民挙げて実践することで、日本の食や地域を支える農業の発展や障害者等の一層の社会参画等が促進されるとともに、障害者のみならず、高齢者、生活困窮者、ひきこもりの状態にある者等の就労・社会参画支援、犯罪をした者等の立ち直り支援等にも対象を広げ、地域共生社会の実現を目指すこととなりました。こうした中で、世代や背景を超えた多様な人が集い、農作業や農業体験を通じて交流・参加し、健康づくりや生きがい、心の回復、職業訓練、立ち直り支援など、さまざまな社会課題の解決につながる「ユニバーサル農園」の普及・拡大についても、同ビジョンに初めて位置付けられました。なお、地域共生社会の実現に関しては、2011年に制定されました障害者基本法や2024年に制定されました認知症基本法でも、繰り返し訴えられており、こうした農福連携の広がりは、地域共生社会実現ための具体的な方法が強く求められてきたことを受けての動きとも考えられます。
なお、今回、新しく提案されました「ユニバーサル農園」とそれまで使われてきました「農福連携」の概念整理も重要です。政府が発表しました「農福連携等推進ビジョン」を正確に読み込むと、「ユニバーサル農園」は、「農福連携等」の「等」に含まれることになります。しかし、これは法制度や事業制度での対象をきっちり区分けしないといけない行政用語での整理です。本学会では、研究や実践の世界では、「ユニバーサル農園」も農福連携の一つの類型として捉えて研究や実践を行っていくべきとの考えのもと、農福連携の研究対象に位置付けています。
そして、こうした農福連携の取組や対象が広がる中で、それに対応していくためには、農業系の学会、社会福祉系の学会、医学系の学会、その他関連する学会が、それぞれの研究分野で研究を行うだけでは、現場に貢献できる研究成果をあげることが難しくなっているとの共通認識が農福連携に取り組む研究者間で生まれ、今後の研究の進め方についても、議論が行われるようになりました。また、実際に、色々な学会に、他の研究領域の研究者が相互乗り入れすることも増えてきました。
こうした状況の中、2024年12月21日に、農福連携の研究を行っている農業経済学、園芸療法学、老年医学、地域福祉学の専門家が神戸学院大学で開催されました研究会に集い、各研究領域における最新の研究成果を紹介し合い、多様化する農福連携について、今後、どのように研究を進めていくべきか検討が行われました。その結果、それぞれの研究領域の専門家が力を結集して研究を行い、その成果を現場に速やかにフィードバックしていくような共通のプラットフォームが必要であるとの共通認識を形成するに至りました。
この研究会での議論を受けて、関係する多様な研究領域の研究者及、現場で農福連携に取り組む実践者が共に集い、上記のようなプラットフォームの機能を果たす学会を立ち上げるべく、取り組んでいくこととなりました。
以後、まずは発起人になっていただける方々に力を貸していただこうということで、各方面にお声がけさせていただきましたところ、合計205名の方々に発起人として、お力を借りることができました。また、その中から、志願していただきました34名の方々に設立準備委員会を立ち上げていただき、その場での議論を受けて、学会会則案の策定、会員募集の開始等を行った上で、2025年12月14日に設立総会を開催し、学会が設立されることとなりました。
本会の設立と活動の目的は、会則にも記されているように、農福連携について、農学、社会福祉学、医学、教育学、工学、法学、経済学等の各研究領域の専門家が共同で実施した議論や研究成果の集積を通じ、それらを現場に還元するプラットフォームや実践者の活動を支えるコミュニケーションの場となることです。
また、学会が行っていく事業としては、これも会則に記されていますが、以下の5つを掲げています。
今後は、こうした活動を通じて会員間の交流を図りつつ、農福連携に貢献する研究成果や情報を提供していきます。また、そうした活動を通じて、農福連携の一層の拡大、そしてその結果としての地域共生社会づくりに、当学会も貢献していくことを目指します。
| 常任理事 | 理事(常任理事の補佐) | |
|---|---|---|
| 会長 | 吉⽥⾏郷(千葉⼤学) | |
| 副会長 |
豊⽥正博(兵庫県⽴⼤学) 岡村毅(東京都健康⻑寿医療センター研究所) |
|
| 総務担当理事 | 川辺亮(県立広島大学/農都共⽣総合研究所) | 作⽥⻯⼀(宮城⼤学) 直江秀⼀郎(農林⽔産政策研究所) |
| 岡村毅(東京都健康⻑寿医療センター研究所)※兼務 | 町⽥怜⼦(東京農業⼤学) 宇良千秋(東京都健康⻑寿医療センター研究所) | |
| 企画担当理事 | 吉田行郷(千葉大学)※兼務 | 前川哲弥(NPO 法⼈ユメソダテ、株式会社夢育て) 笠間令⼦(株式会社笠間農園) |
| 編集担当理事 | 豊⽥正博(兵庫県⽴⼤学)※兼務 | 中本英⾥(農林⽔産政策研究所) 菊川裕幸(神⼾学院⼤学) |
| ⼩泉隆⽂(名寄市⽴⼤学) 宮脇⽂恵(宇都宮短期⼤学) | ||
| 広報担当理事 | 川辺亮(県立広島大学/農都共⽣総合研究所)※兼務 | 太⽥智(静岡県⽴農林環境専⾨職⼤学) 鈴⽊厚志(京丸園株式会社) |
| 岩崎寛(千葉⼤学) 中井秀昭(京都橘⼤学) 渋谷雅史(NPO 法⼈⼟と⾵の舎) | ||
| ブロック理事 | ||
| 北海道 | 義平⼤樹(酪農学園⼤学) | |
| 東北 | 佐々⽊秀之(宮城⼤学) | |
| 関東 | 永嶋昌樹(日本社会事業大学) 今村直美(NPO 法⼈みんなの広場「⾵」) ⼩島希世⼦(NPO 法⼈農スクール) | |
| 中部 | 鈴⽊孝治(⾦城⼤学) 堀江裕(藤⽥医科⼤学地域共⽣社会推進センター) | |
| 近畿 | 植⽥剛司(NPO 法⼈ディーセント・ファームかしわら) ⽯神裕美子(NPO 法⼈たかつき・晴耕⾬読舎&Roles) | |
| 中国・四国 | ⼤森⼀弘(株式会社おおもり農園) | |
| 九州・沖縄 | ⽥中基次(株式会社リーフエッヂ・あまみん) 吉岡奈々(九州栄養福祉大学) 濱田健司(東海大学) | |
監事 川⼿督也(⽇本⼤学) ⼩柴有理江(農林⽔産政策研究所)
